作品情報
製作年:1936年 製作国:日本 監督:清水宏 原作:川端康成 脚本:清水宏 音楽:堀内敬三 出演:上原謙/桑野通子/石山龍児/双葉かほる 他 上映時間:76分
あらすじ
バスに道を譲ってくれる人々に対して運転手は「ありがとう」といって手を振る。いつしかバスの運転手は道行く人々から「ありがとうさん」と呼ばれ親しまれるようになった。そんな「ありがとうさん」は今日も乗客を乗せてバスを走らせる。
『有がたうさん』の感想と評価
昭和11年に公開されたロードムービーなんですがこれがなかなか面白い。
南伊豆を舞台にバスは伊豆の港町から天城峠を越えて駅まで向かうだけなんですが、当時としては珍しいオール・ロケーションで撮影された南伊豆の風景が素晴らしく、音楽も軽快。
この時代の日本はまだサイレント映画の需要が高く、そのためでしょうかサイレント映画に慣れた観客のために役者たちは大きな声でゆっくりとセリフを話すのが特徴的です。
この演出が映画に実に良い効果をもたらしていて、観ていてなんだかほっこりします。
当時の暗い世相も織り込んでいて映画の冒頭から貧しさ故に売られていく娘が母親と一緒にバスに乗り込んできます。駅に向かう途中でも、この場面は天城峠で峠の道を舗装している白いチョゴリを着た朝鮮人女性労働者たちなども登場してきて、セリフからは当時彼女たちが置かれていた過酷な状況がなどが窺い知ることができます。
主演のありがとうさんは上原謙(加山雄三のお父さん)が演じています。
バスの乗客の一人で随分と美人な女給がいるんですが、この女給を桑野通子という人が演じています。この人は桑野みゆきのお母さんです。
清水宏監督の他の映画にもけっこう出演していたりしますが、ずいぶんと若いうちに亡くなってしまいました。
清水宏は国内外で評価の高い小津安二郎や成瀬巳喜男とほぼ同期の映画監督なんですが、どういうわけだかこの両者に比べると知名度が低いです。この両者に負けないぐらい質の高い作品を残しているんですがねぇ。
もっと評価されるべき監督だと思います。
個人的評価

この映画の評価は☆☆☆☆
清水宏監督作品はこのブログでどんどん取り上げていこうかと思う。
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