映画『キューポラのある街』北朝鮮帰還事業の功罪

キューポラのある街

作品情報

製作年:1962年 製作国:日本 監督:浦山桐郎 原作:早船ちよ 脚本:今村昌平/浦山桐郎 音楽:黛敏郎 出演:吉永小百合/東野栄治郎/市川好郎/浜田光夫/菅井きん/加藤武 他 上映時間:99分

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あらすじ

埼玉県川口市は古くから鋳物の町として知られ、数多くの鋳物職人が住む町でもある。

明るく前向きな少女、中学三年生の石黒ジュン(吉永小百合)は鋳物職人である父・辰五郎(東野栄治郎)の突然の失職により楽しみにしていた修学旅行を諦め高校進学の費用も自力で貯めようと、パチンコ屋でアルバイトを始める。そんな中、担任教師(加藤武)の助力もあって修学旅行にも行けるようになり、やがて父・辰五郎も再就職を果たし全てが良い方向へと向かうように思われたのだが・・・・・・

昭和30年代の様子

当時、鋳物の町とされた埼玉県は川口市を舞台に庶民というか当時としてもかなり最底辺な貧困家庭の状況が描かれておりまして、中学三年生のジュン(吉永小百合)を筆頭に子供を三人抱えているのに加え、新たに赤ん坊が生まれてそのタイミングで父親の東野栄治郎がリストラにあって失職。

一家は貯金もなしに明日食う金もなし、詰んでいる状態にもかかわらず悲壮感があまり感じられないのは吉永小百合の感情豊かな瑞々しさと、その弟タカユキを演じる市川好郎の少々荒っぽい役どころではあるが元気ハツラツとした好演によるところが大きい。

それとこの映画で昭和30年代の川口の風景なんかを見ると、やっぱり「三丁目の夕日」は現実ではなくてファンタジーの世界なんだというのを改めて思いますね。

映画の中でジュンとタカユキの友達の在日朝鮮人一家が母親だけ残して北朝鮮に帰国する様子が描かれているのですが、これは在日朝鮮人の帰国運動とか帰還事業といって、まだこの当時は日本もまだまだ貧しくて日本人も在日朝鮮人も貧乏な人たちが多かった。

そんな時に北朝鮮は在日朝鮮人の人たちに向けて北朝鮮は「地上の楽園」だとか大々的に宣伝して、よく調べもしないでこれを鵜吞みにした当時のマスコミや進歩的文化人とか政治家なんかもね、北朝鮮の宣伝に加担するような形で在日朝鮮人の人たちに積極的に帰国を促して、日本人も含めて9万人もの人たちが海を渡って北朝鮮に渡ったというから、随分と罪なことをしてくれたもんだよ。

この映画でタカユキの友達で在日朝鮮人のサンキチとの別れのシーンのくだりは当時としては希望が持てる別れのシーンだったんだろうけど、今の視点で見ると悲しくてやりきれない。

個人的評価

巨匠
巨匠

この映画の評価は☆☆☆☆

いつの時代も進歩的文化人てのはロクなもんじゃないね。


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