映画『ブルーに生まれついて』の感想と評価 アメリカ的な萌えを表現

ブルーに生まれついて (字幕版)

作品情報

製作年:2015年 製作国:アメリカ/カナダ/イギリス 監督:ロバート・バドロー 脚本:ロバート・バドロー 音楽:デヴィッド・ブレイド/トドール・カバコフ/スティーブ・ロンドン 出演:イーサン・ホーク/カルメン・イジョゴ/ディック・ボック/他 上映時間:97分

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あらすじ

チェット・ベイカーは一流のトランペット奏者だったけど、麻薬に溺れてどん底な日々を送るようになってしまいました。

そんなチェット・ベイカーの前に一人の女性が現れて、二人はたちまち恋に落ちるのでした。

『ブルーに生まれついて』の感想と評価

この『ブルーに生まれついて』は何とも珍妙な映画でございまして。

ジャズミュージシャンのチェット・ベイカーの半生を描いた伝記映画でもあるのですが、ただ実際のエピソードの中に架空の人物をぶっ込んでおりまして、その架空の人物というのがチェット・ベイカーの恋人なんですけれども。

この架空の恋人をカルメン・イジョゴが演じております。

それでこの映画はチェット・ベイカーとその恋人との物語でもあるのですが、先ほど申し上げましたように恋人が架空の人物でございますから恋人とのお話は全部嘘で、それ以外は本当の話といった一風変わった、いや、かなり変わった、なんとも変則的な伝記映画となっております。

この架空の恋人の描き方ってのが、ものすごい理想化された女性像として描かれておりまして、薬物でボロボロになったチェット・ベイカーを献身的に支えていくといった描かれ方をしているわけなんですけれども、実際にはチェット・ベイカーの周りにはこんな素敵に良い女なんていたためしがなくて、チェット・ベイカーと同じように薬物中毒の女性とかそんなんばっかですよ。

というよりチェット・ベイカーと付き合ったから、みんな薬物中毒になっちゃった。

映画だと恋人は一切ドラッグなんてやりませんし、チェット・ベイカー自身も「愛する君のために薬中を克服するよ!」みたいな感じになっておりましたが、実際にはチェット・ベイカーはドラッグを辞めるなんてことはなくて、死ぬまでドラッグを切らしたことがありませんでした。ドラッグ絡みで逮捕されて服役も経験しております。それに加え、奥さんや恋人たちを薬漬けにしてドラッグに溺れさせてしまって、中には麻薬の密輸までさせられて刑務所に入っちゃった人もいたりと、このようにチェット・ベイカーという人は筋金入りのどクズ野郎なんでございます。

それをこの映画はチェット・ベイカーと架空の恋人との馴れ初めなどを美談として仕立て上げているわけなのですが、一体どういうつもりなんでしょうか?

その意図がさっぱりわからない。

ジャズファンの方たちでしたら、こういったチェット・ベイカーの数々のクズエピソードはご存知かと思われますが、ジャズに興味がない人たちがこの映画を鑑賞したら、「チェット・ベイカーって人はロマンティックな恋をしてたのねぇ~、切ないラストに思わず涙がちょちょぎれちゃったわ~、イーサン・ホークの歌うMy funny  Valentineもと~っても素敵痺れっちゃったわぁ~、けどマイルス・デイビスって人はすっごく感じ悪い。何なの?あの上から目線の態度、ああいうの本当にイラつくし、ウザすぎっ!」といったマイルス・デイビス評を下しかねません。『ブルーに生まれついて』はそんな危険を孕んだ映画でもあるのです。

そして最後にこの映画において、カルメン・イジョゴ演じる理想化された架空の恋人なんてものは萌えアニメの妹キャラと本質的には同じものだという事だけは皆様にお伝えしておかなければなりません。

『ブルーに生まれついて』のジェーンは『エロマンガ先生』における紗霧と変わりがありません。

個人的評価

巨匠
巨匠

この映画の評価は☆☆☆

雰囲気は良いんだけどね・・・・・・


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